「アナウンサー・キャスター採用試験で合格しやすい自己紹介・自己PRの作り方」についてポイントをお伝えします。
自己紹介・自己PRは「初めて会った人」を意識する
多くのアナウンサー希望者のES(エントリーシート)や履歴書、作文を見ると「初めて会った人を意識していないよね?」と思います。
あなたは、自分が伝えたいことを文章化するにあたり、自分の経験談なので、そのときの状況や気持ちがよく分かるでしょう。
しかし、あなたの書類を読む面接官の人たちは、あなたに対しての情報が全くない状態、つまり、初対面の状態です。
初対面の人を意識して書類は作成しましょう。
初対面の人に説明したり伝えたりするときには、初めての人にも分かるような文章表現をしたり言葉を選んだりしていますよね?
その配慮が、なぜか局アナ採用試験の書類にはない方が多いです。
初めて会った人にあなたの書類を読んでもらって、あなたのことを理解してもらうにはどうしたらいいか。
よく考えてみてください。
言葉は簡潔に
書き言葉も話し言葉も、とにかく一文は短く、簡潔にしましょう。
目安は、小学校高学年の子に話したときに分かるような単純明快な文章です。
私は、相澤静です。
元NHKキャスターです。
現在は「相澤静アナウンススクール」を経営しています。
アナウンススクールの生徒は、学生から社会人まで様々な年齢の人がいます。
オンラインのアナウンススクールなので、日本全国からの受講が可能です。
このくらいの文章で伝えましょう。
意外と、この「一文を短く簡潔に」というのができていないアナウンサー希望者は多いです。
そして、この「一文は短く簡潔に」は、書類を書くときだけでなく、実際に面接で話すときにも必要です。
「こんな簡単な文章でいいのだろうか?」と不安に思う人もいるかもしれませんが、簡単な文章であればあるほど人には伝わりますから、安心してください。
自己紹介・自己PRは年齢にふさわしい内容にする
あなたの自己紹介や自己PRは、あなたの年齢にふさわしい内容になっていますか?
これまで、大学生から社会人、20代前半から30代後半の多くのアナウンサー希望者にお会いしてきました。
主に体験説明会に参加くださる方が多いのですが、体験説明会では、ビデオカメラの前で1分間の自己紹介(自己PR)と志望動機を話していただいています。
そして、その場でフィードバックをしています。
時々「年相応の自己紹介(自己PR)じゃないな」と思うことがあります。
特に社会人のアナウンサー希望者に多いです。
例えば。
30代前半なのに「私は笑顔が素敵だと言われます」とか放送業界のキャリアがあるのに「私は体力に自信があります」などです。
社会人としての経験があるのに、まるで大学生が言うような内容を自己紹介や自己PRにしている人が多いです。
ちょっと考えてみてください。
あなたが面接官だとして、30代前半の人が「私は笑顔が素敵だと言われます」と自己PRしたら、どう思いますか?
放送業界のキャリアがあるのに、そのキャリアのことには触れず「私は体力に自信があります」と言う人がいたら、どう思いますか?
稚拙だな。幼いな。そう思いませんか?
そして、そんな内容のことを自己紹介や自己PRにする30代の人と、20代の大学生で同じようなことを言う人がいたら、どちらを採用しますか?
あなたの自己紹介や自己PRが、あなたの年相応の内容になっているか、今一度、考えてみてください。
アナウンサー試験の自己PRではなく状況説明になっていませんか?
これまで多くのアナウンサー希望者の自己紹介や自己PRを見てきましたが、多くの皆さんに共通していることがあります。
それは・・・「状況説明をすること」です。
私は、地域のボランティアサークルに所属しています。
そのボランティアサークルでは、地域の小学校や介護施設、病院などに赴き、様々なイベントを行っています。
イベントは、演奏会やお話し会、マジックショー、演劇など多岐に渡ります。
私は、特技のバイオリンの演奏を演奏会で披露します。
私のバイオリン演奏で、地域の皆さんが楽しんでくださることが嬉しいです。
この自己紹介を読んで、あなたはどう思いましたか?
書き手の姿や人柄、キャラクターのイメージができましたか?
きっと、できなかったですよね。
なぜなら、この文章は「状況説明」だからです。「状況説明」とは字のごとく「状況」の「説明」です。
状況を説明されたところで、書き手の人柄やキャラクターは想像できないのです。
アナウンサー希望者は「ピンポイント」で自己PRを
多くのアナウンサー希望者は、このような「状況説明」の自己紹介や自己PRをします。
これでは、局アナ採用試験で面接を突破して面接で最後の一人に選ばれるのは難しいです。
多くのアナウンサー希望者の自己紹介や自己PRは「ピンポイント」になっていません。
視野が広いです。他の言葉で言うと、曖昧なのです。
曖昧だと、結局、何が言いたいのか分からないだけでなく、人柄やキャラクターが想像できません。
あなたの伝えたいことを「ピンポイント」で伝えましょう。
状況説明の自己PRを「具体的なエピソード」に変更する
私は、地域のボランティアサークルに所属しています。
そのボランティアサークルでは、地域の小学校や介護施設、病院などに赴き、様々なイベントを行っています。
イベントは、演奏会やお話し会、マジックショー、演劇など多岐に渡ります。
私は、特技のバイオリンの演奏を演奏会で披露します。
私のバイオリン演奏で、地域の皆さんが楽しんでくださることが嬉しいです。
先に出したこちらの文章を「具体的なエピソード」で書いてみましょう。
私は、地域のボランティアサークルに所属しています。
そのボランティアサークルでは、地域の小学校や介護施設、病院などに赴き、様々なイベントを行っています。
先日、介護施設で演奏会がありました。私はバイオリン奏者として参加したのですが、演奏後に介護施設を利用している女性に声を掛けられました。
その方は、50歳を過ぎてからバイオリンを習い、今も時々練習しているとのことでした。しばらくの間、ふたりでバイオリン話に花が咲きました。
自分のバイオリンで皆さんに元気を届けられたら…と思って演奏していますが、こうした会話も楽しみのひとつです。
違いが分かりますか?
この文章は「様々なイベントを行っている」の中の「演奏会」にピンポイントで焦点を当てています。
さらに「演奏会」の中で実際にあった「エピソード」に焦点を当てているのです。
このように「具体的なエピソード」にすることで印象に残りやすい文章にすることができます。
ここまでピンポイントだと、書き手の姿や人柄、キャラクターが想像できるだけでなく、印象に残りやすいと思いませんか?
面接官の記憶に残り、選ばれる自己紹介や自己PRは、このように「ピンポイント」で語られているものです。
あなたの自己紹介や自己PRも、これだけ「ピンポイント」にしてみましょう。
そして、「自己紹介や自己PRは、あなたの人柄が伝わるような具体的なエピソードで作る」これが鉄則です。
応募書類に自己PR書は付けるべきかどうか
「自己PR書はつけるべきだ」と教えている先生もいます。
私の個人的な見解をお伝えしますね。
NHKキャスター・リポーターの試験は「応募要項に記載のないものをあえて付ける必要はない」と思っています。
私は民間企業で採用の仕事をしていたときに書類審査を担当していました。一番最初の段階の書類の振り分けです。
そのときにこちらが指定した応募書類を送ってこなかった方は「必要書類が揃ってない」という理由で不合格にしていました。
その会社にはいませんでしたが、逆に、こちらが指定した書類以外のものを送ってきた方がいたとしたら、それはそれで不合格にしていました。
なぜなら、指定していない書類を送るということは「こちらの指示を理解できないのかな」「協調性がないのかな」という判断になるからです。
民放のアナウンサー試験では、募集要項に記載がなくても自己PR書を提出することがプラスに働いていたでしょう。
なぜなら、民放は「個性」が求められるから。いかに他の受験生よりも「目立つか」が大切だから。
しかし、NHKのキャスターは求められているものが民放と違います。
民放で「自己PR書」を付けて書類審査が通過していたのに、NHKのキャスター試験では全然書類が通過しないとお悩みの方は多いです。
そういう方は、他にも改善する点はあると思いますが、自己PR書が原因ということも考えられます。
自己PR書をつけなくても合格している人は合格しています。
面接で話せる自己紹介・自己PRは最低3つは用意する
書類審査を突破すると面接があります。
面接でも自己紹介・自己PRは必須です。でも、もし1つしかないとしたら、それは大変危険です。
面接で話せる自己紹介は、もちろんたくさん持っていたほうがいいのですが、最低3つは用意しておきましょう。
面接で何度か聞かれることがあります。
最初に自己紹介をしたからと気を抜いていると「先程と違う自己紹介があったらしてください」と言われます。
私がNHK室蘭放送局を受けたときには、面接とカメラテスト、合わせて3回「自己紹介をしてください」と言われました。
このときは自己紹介はいくつか持っていたので、慌てることなく3回とも違う自己紹介ができました。
面接は準備が大切です。
自己紹介、なるべくたくさん作って話せるように練習をしておいてくださいね。